「株式投資はギャンブルじゃない。過去の実績を見れば、長期で運用すれば勝てる」。こういう話を聞くたびに、俺は引っかかる。過去の成績がよかったことと、これからも必ず儲かることは、同じなのだろうか。
俺は株式投資をしている。そして、株式投資はギャンブルだと思っている。 自分の金を、不確実な未来に賭けているからだ。
持ち株が上がって「俺、うまいんじゃね?」と思ったこともある。先物取引で損を取り返そうとして、徹夜したこともある。投資家という肩書きをつけたところで、中身が急に冷静な人間になるわけではなかった。
過去の実績は、未来の保証書ではない

過去のデータを調べることに意味はある。企業の業績を分析することも、長期・積立・分散を考えることも、無駄だとは思わない。
ただ、「過去のある期間では利益が出た」という話には、対象にした資産や期間、買い方などの条件がある。それを「これから何を買っても、長く持てば必ず勝てる」に変えてしまうのは、話が飛びすぎている。
金融庁も、長期・積立・分散による資産形成を紹介する一方で、株式や投資信託には元本割れのおそれがあると説明している。
参考:金融庁「資産形成の基本」
分析によって、いい投資先を選べる可能性はあると思う。でも、俺の分析が正しいかどうかも、その企業の未来も、買った時点では分からない。
戦争が起こるかもしれない。大きな金融危機が起こるかもしれない。期待していた事業が、思ったように育たないかもしれない。自分が想像できる範囲だけで、未来が進むとは限らない。
勝てそうだと思って買うことと、必ず勝てることは別だ。
パチンコやパチスロで、良さそうな台を予想して選ぶ場合にも、予想そのものが外れている可能性はある。ここで似ていると思うのは、自分なりの根拠を持って金を入れても、望んだ結果までは確定できないことだ。
未来が見えるなら、俺はもう会社を辞めている。明日の株価が分かる人間が、来月の給料日を待っているわけがない。
株と馬券の仕組みが同じだと言いたいわけではない
株式を持つことは、会社の一部を所有することだ。企業が利益を生み、その一部が配当として還元されることもある。レースの結果に賭ける馬券とは、仕組みが違う。
だから、すべての投資とギャンブルで、儲かる可能性やリスクまで同じだとは思っていない。
俺がギャンブルと呼んでいるのは、結果が確定していないものに、自分の金を賭けているという部分。 そして、金を入れた後の自分の反応だ。制度の違いを説明できても、欲まで消せるわけではない。
金を入れた瞬間から、結果が気になり始める

株を買ったら、株価が気になる。馬券を買ったら、レースの結果が気になる。
自分の金が入っていなければ、ただの数字だったものが、急に自分の問題になる。今でも個別株を買うと、その後の株価変動は気になる。
「企業の将来性に投資している」と言いながら、買った後に下がれば悲しい。逆に上がれば、普通にうれしい。将来性を見ているはずなのに、今日の値段にも感情が反応する。
企業を長い目で見ている俺と、今すぐ含み益が欲しい俺が、同じ口座に同居している。
どれだけ立派な投資方針を用意しても、金が増える瞬間は楽しい。株式投資がギャンブルと似ていると思う理由には、この分かりやすい快感もある。
勝つと自分の実力だと思いたくなる

俺は2019年に太陽誘電の株を買って、翌年の2020年に太陽誘電が新工場を立ち上げた。保有していた俺の株はどんどん値上がり、2021年には買ったときの倍以上の株価になっていた。
俺はその時思ったよ。自分が投資のうまい人間だと。
「俺の見立ては合っていた」。そう思えるのは気分がいい。自分で選んだ株が上がれば、企業を見る目まで認められたような気になる。
でも、株価が上がったという結果だけで、自分の判断の何が正しかったのか、どこまでが相場や運の影響だったのかを、きれいに分けられるだろうか。新工場だけが値上がりの原因だったとも言い切れない。
工場を建てたのは企業なのに、成長した気になっているのは俺の自信だった。
株を買って上がれば「分析どおり」。下がれば「相場が悪い」。そんなふうに結果を解釈したくなるのも分かる。自分の見る目がなかったと思うより、外の何かを理由にするほうが気は楽だからだ。
勝った記憶だけで、次も勝てる気になる

たとえば、1万円の損を何回か出していても、一度に5万円儲かった場面ばかり思い出してしまうとする。これは説明のための例だけど、そうなれば頭の中の成績は、実際の収支よりよく見える。
「前も勝てたし、今回もいけるんじゃね?」。その自信の根拠が分析なのか、勝ったときの気持ちよさなのか、分からなくなる。
俺も、太陽誘電の株価上昇で自分がうまいと思った側の人間だ。他人の過信だけを笑える立場ではない。
負けると取り返したくなる

俺には、先物取引をしていた時期がある。
損が出たとき、「次は取り返す」と躍起になって、徹夜したことがあった。これは、株を買って長く保有する話とは別の、先物取引での実体験だ。
いったん損をすると、損をしたままで終わりたくない。「次は取り返す」という言葉の中には、次の取引にどんな根拠があるのかが入っていない。ただ、さっき失った金を戻したい。
金を取り返そうとして、睡眠まで差し出していた。
俺が徹夜したところで、相場がこちらの事情をくんでくれるわけではない。寝ずに頑張ったご褒美に、値段が都合よく動くわけでもない。それでも、取り返したい気持ちでやめられなかった。
ギャンブルの「次で取り返す」と、何がそんなに違うのだろうか。少なくとも、当時の俺の気持ちはよく似ていたと思う。
株の買い増しも、その理由は見ておいたほうがいい。株価が下がった後、当初の根拠を確認して追加で買うことと、負けを早く取り返すために買い足すことは違う。
ナンピンという名前をつけても、悔しさだけで金を追加しているなら、冷静な判断になったわけではない。
他人が儲かっていると、自分だけ損をしている気になる

「この株で100万円儲かった」「仮想通貨で億った」。そんな話を見たとき、すごいな、だけで終われるだろうか。
自分はまだ何も買っていないし、金も失っていない。それなのに、自分だけ機会を逃したような気がする。普段なら気にもしないものが、急に魅力的に見えてくる。
「自分も買っていれば」と思い始めると、その企業や商品の中身より、他人がいくら儲けたかのほうが気になってしまう。
でも、その人が儲かったことは、これから買う自分も儲かる理由にはならない。買った時期も値段も違う。
他人の利益を見て、自分の買う理由まで借りていないか。 ここは、投資という名前でも気をつけたいところだと思う。
やめる理由より続ける理由を探してしまう

含み損の株を持っているとき、「ここで売ったら負けが確定する」と考えることがある。
もちろん、値下がりしたという理由だけで、すべて売るべきだとは思わない。企業への期待や保有する根拠が変わっていないなら、持ち続ける判断もある。
ただ、持ち続けている理由が「この企業に期待しているから」なのか、「損を認めたくないから」なのかは、別の話だ。
「買った値段まで戻ったら売る」。気づけば、企業の未来より、自分が買った値段のほうが大事になっている。相場が俺の購入価格に合わせて、帳尻を合わせてくれる約束はないのに。
パチンコの「あと1万円で出るかもしれない」と同じように、続ける根拠が、いつの間にか願いに変わっていることはないだろうか。
期待して待っているのか、悔しくてやめられないのか。 同じ「保有する」という行動でも、中身はずいぶん違う。
自分は資産を増やしたいのか、刺激が欲しいのか

株式投資とギャンブルを分ける説明はいろいろある。でも、俺が気にしておきたいのは、取引している自分が何を求めているのかだ。
企業の成長を期待して買ったはずなのに、すぐに金が増えないと物足りなくなる。損をしたら、次の取引で取り返したくなる。そうなれば、最初に立てた目的から離れていく。
先物取引で徹夜した経験を思い返すと、「自分は投資をしているから冷静だ」とは、とても言えない。少なくとも、「次で取り返す」となった俺は、金額だけでなく自分の時間まで相場に使っていた。
資産が増えても安心できない理由については、過去の記事でも書いている。金を増やすことと、金に振り回されなくなることは、別だった。
-
-
【不安】資産1,800万円あっても安心できない|独身会社員が怖いと思うこと
続きを見る
今やろうとしているのは、将来のための投資なのか。それとも、今の悔しさや退屈をどうにかするための取引なのか。
名前を「資産形成」に変えるだけで、自分の欲が上品になるわけではない。俺もそこは忘れないでいたい。
それでも俺は、株式投資は儲かるものだと思っている

ここまで、株式投資はギャンブルと似ていると書いてきた。
それでも俺は、株式投資は儲かるものだと思っている。ずいぶん都合のいい結論に見えるかもしれないけど、これが本音だ。
未来は分からない。運の要素もある。だけど、俺が株を買うのは、企業がこれからも事業を続け、利益を生み出していくと期待しているからだ。
その企業で働く人がいて、新しい商品やサービスを作る人がいる。もっと便利にしよう、もっとよくしようと考える人がいる。俺は、その積み重ねがこれからも続いてほしいと思っている。
株を通じて、国や会社、そこで働く人たちの未来に、自分の金をベットしている感覚だ。
もちろん、世界が成長しても、俺が選んだ会社が必ず成長するとは限らない。会社が成長しても、どんな値段で買っても儲かるわけではない。それでも、利益を得られる可能性があると思うから買う。
俺は毎月の積立も、個別株への投資も続けている。具体的な資金の回し方は、過去の記事でまとめた。
-
-
【36歳会社員】5年で資産150万円→1,800万円|年間300万円を投資できた理由
続きを見る
「必ず儲かると分かっている」と「儲かると思っている」は違う。俺がいるのは後者だ。
俺は世界を信じている。日本を信じている。人間の成長は、これからも続いてほしい。
だから、これからも株を買う。ただ、持ち株が上がったとき、自分一人の実力だと勘違いするのは控えたい。工場を建てたのは、俺じゃないのだから。